お寺のもつ可能性
3000以上のお寺がある、古都京都。京都のお寺と聞くと、清水寺や東寺など、日々観光客で賑わっているイメージがあるのではなかろうか。もちろん、国内外から多くの観光客が訪れている寺はたくさんある。しかし、中には仏教の面白さを広めたり、お寺への間口を広げるために独自の取り組みをしているお寺もある。その中でも、今回は龍岸寺と明覺寺の取り組みを紹介しようと思う。
龍岸寺は京都駅から徒歩10分程の場所にある。渋川春海の屋敷跡に建つ、ユニークな歴史を持つお寺である。
龍岸寺では仏教を広める取り組みとして、アイドルが活躍している。学生とのコラボにより誕生したアイドルグループ「てら*ぱるむす」は、仏教をもとにした曲を歌い、お寺文化をわかりやすく伝えている。2020年に活動を終了したが、そのユニークな取り組みは大きな話題となった。
仏像を彫刻するワークショップには全国から参加者が集まる。コロナ期間を経て、仏像を身近に欲しい人も増えているそうだ。
「今後はより地域に根差した取り組みをしていきたい」と、住職の池口さんは語る。どのような新たな取り組みが始まるのか、注目である。
明覺寺も京都駅より歩いて10分ほどの場所にある。かつて、寺の一帯は本願寺の門前町として栄えていたそうである。明覺寺はお寺の、宗教的な施設としての役割を持ちつつ、一般の人向けに間口を広げる活動をしている。
『日曜学校』では近所の子供を中心に、工作などの遊びをしている。『明歌会』では歌の稽古をしていて、遠方からの参加者もいる。また、お堂がコワーキングスペースとして開放されている日もあり、作業やお話など、思い思いに使われている。コロナの期間中は参加者が大幅に減ったが、寺の行事は宗教活動の核だと考え、一つも中止にしなかった。
住職の柱本さんは、今後は行政と協力し、悩みを抱える人や障害を持つ人など、様々な人のサポートをする活動をしていきたいと語る。
今回の取材を通し、日本古来よりある「寺」の可能性の大きさを感じた。急速に進歩していく現代において、静かに心安らぐ環境で、地域の人とのかかわりを持てることのニーズは大きいと思う。寺の持つ可能性、人々の欲する環境、そして京都ならではの風土を掛け合わせることで、人々の暮らしの幅をもっと広げられると感じた。
(下京ローカルグッドレポーター:エイキチ)
2023.10.20