杉本家住宅~雨水を防災などに活用 天水バケツプロジェクト~
まちづくりの取り組みなどの紹介を通じて、下京区の魅力を再発見していただくコーナーです。
今回ご紹介するのは、災害時に雨水を消火用水として活用するプロジェクトに取り組んでいる杉本家住宅です。
杉本家住宅は江戸時代の呉服商「奈良屋」の京町家で、築年数は150年を超え、国の重要文化財に指定されています。通常時は住宅の一般公開や年中行事に合わせた特別公開を行い、住宅の建築的・文化的価値を守り伝える活動を行っています。
そんな杉本家住宅が現在参加している取り組みが、「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」(※)の「文化遺産の危機管理研究会」によって昨年から始まった、日常的に雨水を貯め、消火用水として利用することを促進する「天水バケツプロジェクト」です。「過去、地震発生時に消火栓が使えない事例が多くありました。住民の手で初期消火を行うためには、自然の水を日ごろから貯めておくことが必要だと考えました」と研究会メンバーの梶川伸二さん。雨水を消火用水として使う方法は江戸時代から「天水桶」として用いられており、この伝統的な発想をもとに、ローコストで誰でも簡単に取りつけられる方法を試行錯誤し、雨樋からひもを通して貯水するひも樋方式を開発しました。
※京都の有形・無形の文化遺産を後世に継承することを目的に、大学、行政、文化人などが連携して活動する場を提供している団体
貯めた水を植栽への水やりに使ったり、日常的に利用できるなど、環境問題の取り組みの側面もある同プロジェクト。杉本家住宅では現在、4カ所に天水バケツを設置。(公財)奈良谷記念杉本家保存会の杉本歌子さんは、自然の水を日頃から使うことで、水に対する考え方が変わったそうです。「水道水を使う機会が減り、水の循環を意識するようになりました」
先人の知恵に光を当てたこのプロジェクトを、文化財である杉本家住宅から発信することで社会に貢献していきたいと考えている杉本さん。「多くの人が天水バケツを設置すれば、各々の貯水量は少なくても、地域が面として多くの水量を確保することになります。身近にできる防災、環境保護にぜひ取り組んでもらえたら」
京都発祥の生活の知恵が、将来的に全国や海外に広がることを期待します。
- 杉本家住宅(綾小路通新町西入)
※市民しんぶん下京区版「下京のひびき」令和4年1月15日号掲載時の内容です。
2022.01.15